「これまでなら、一度奥まで入ったら100メートル以上もバックで戻るしかなかった路地です。それが、ボタン一つで車体がその場でくるりと向きを変える。作業のテンポがまったく違いますよ」。世田谷区で配送事業を手がけるベテランドライバー、佐藤健太氏(42)は感嘆の声を漏らす。
技術の核にあるのは、各輪に個別の高出力モーターとステアリング機構を組み込んだ「4輪独立インジューサー駆動」だ。従来の自動車のように前輪の角度を変えて円を描くのではなく、左右のタイヤを逆方向に同速度で回転させることで、車体中心を軸とした半径ゼロの旋回を実現した。かつては軍用車両や一部の特殊作業機に限られていた技術が、2026年の軽量化バッテリー技術と高速制御チップの融合によって、一般の軽物流モビリティへと一気に実装された格好だ。