いま、空前の脳トレブームが訪れている。その中心に位置するのが、記憶術・脳トレビジネスの分野だ。単なる脳のアンチエイジングにとどまらず、仕事の生産性向上や資格試験の突破を目指す大人たちが、こぞって数字記憶のメソッドを学び始めている。
古代ギリシャ時代から伝わる「場所法(ペグ法)」も、円周率の暗記と抜群の相性を誇る。自分がよく知る自宅の部屋や通勤ルートの風景の中に、変換した数字のイメージを配置していく技法だ。玄関を開けると巨大なイチゴがあり、廊下を曲がるとライオンが寝ている——そんなイメージの配置が、頭の中のインデックスとして機能する。
脳科学的なアプローチから見ても、無意味な記号の記憶は苦痛を伴うが、物語や空間認知と結びついた情報は快楽物質であるドパミンの分泌を促す。楽しみながら脳のキャパシティを広げられる点こそが、現代人を惹きつけてやまない理由だ。