「庭の手入れに入った際、施主様から『山茶花を剪定してほしい』と言われて現場を見ると、樹齢50年の立派なヤブツバキだったというケースは日常茶飯事です」。都内で造園業を営む1級造園施工管理技士は、現場での実感をこう明かします。専門業者でさえ、花が咲いていない剪定シーズン(初夏)には葉の微細な毛や鋸歯をルーペで確かめる場面があるほどです。
SNSやネット掲示板の園芸コミュニティを定点観測すると、「祖父が椿だと信じて育てていた木が、散るときにバラバラになって初めて山茶花だと知った」「近所の公園のプレートが椿と山茶花で誤植されていた」といった投稿が毎年冬になると数百件規模で寄せられます。一般ユーザーがこれほどまでに混乱する背景には、日本が誇る品種改良の歴史的過剰さが存在します。
江戸時代から続く園芸ブームにより、椿だけで数千種類、山茶花でも数百種類に及ぶ園芸品種が作出されてきました。その中には、「平たく咲く椿」や「花びらが1枚ずつこぼれる椿(肥後椿や唐椿の一部交配種)」、「花首の落ちにくい山茶花」といった例外的な品種が多数流通しています。直感的な「見た目の色や形」だけで判断しようとすると、熟練の園芸ファンであってもトラップに陥ってしまうのが実情です。