海外から無言の帰国を果たした遺体に対し、国内の大学研究室で行われた再度の司法解剖。ここで威力を発揮したのが、日本の先端的な法医学技術だ。現地警察の見立てでは「転落死」や「単純な溺死」と処理されかけていた遺体から、微小な皮下出血や薬毒物の痕跡が相次いで検出された。
骨折の形状や創傷の角度を3次元的に再構成する最新の画像解析は、受傷時に第三者による強い物理的圧迫が加わっていた事実を克明に証明した。法医学者たちの緻密な鑑定結果は、現地当局の初動ミスを覆し、他殺の動かぬ証拠として捜査本部に提出された。物言わぬ遺体が放つ微小なシグナルが、闇に葬られかけた未解決事件の扉をこじ開けた瞬間である。