2010年代半ば、日本のテレビドラマ業界は大きな転換期を迎えていた。その渦中で登場した『好きな人がいること』は、フジテレビの象徴である月9ブランドの底力をまざまざとせしめた作品だ。波音とともに流れる心地よいサウンドトラックと、色彩豊かな湘南のグラデーション。画面全体から匂い立つような夏の空気感が、視聴者を瞬時に作品の世界観へ引き込んだ。
パティシエとしての矜持を持ちながらも恋には不器用な主人公・櫻井美咲。彼女を取り巻く柴崎家の長男・千秋、次男・夏向、三男・冬真。この緻密に計算されたキャラクター配置が、単なる恋愛ドラマの枠組みを超えた奥深い群像劇を生み出していたのだ。