インターネット上の検索窓には「ハサミムシ 毒」「ハサミムシ 刺された」といったキーワードが散見されますが、これは昆虫学的に明確な誤解です。
ハサミムシ(革翅目)は、尾端にある頑丈なハサミ(尾挟)を使って獲物を捕獲したり、外敵を威嚇したりします。しかし、尾端にも口器にも毒腺は一切存在しません。大型の個体に指を強く挟まれるとチクッとした痛みが走ることはありますが、毒針で刺されたり人体に有害な毒液を注入されたりする危険性は皆無です。
むしろ生態系におけるハサミムシは、庭木や農作物につくアブラムシ、ガの幼虫、ダニなどを捕食してくれる「肉食性の益虫」としての側面を強く持っています。さらに、母親が産んだ卵を外敵やカビから守り、孵化後もしばらく幼虫の世話を続ける「甲斐甲斐しい子育て行動」を行う極めて社会性の高い昆虫でもあります。
ただし、家屋内に侵入した場合は見た目の不快感を与える「不快害虫」として扱われるほか、花弁や新芽をわずかに食害することがあります。黒くて細長い体型から毒虫と混同されがちですが、ハサミムシそのものを過度に恐れる必要はありません。