ネット上の情報検索において、「あのキャラは消えた」「版権元と揉めて封印された」といった真偽不明の情報が拡散される事例が後を絶ちません。しかし、綿密な企業調査を行うと、そこには一般にはあまり認知されていない業界特有の構造的問題と、法律・商標上の複雑な事情が存在します。
第1の誤解は、「店頭で見かけなくなった=キャラクターが完全消滅した」という思い込みです。先述のカールおじさんのように、物流コストの高騰や工場再編によって販売地域を限定しただけのケースや、明治の「サイコロキャラメル」のように、全国販売を終了した後にグループ会社の道南食品へ移管され、「北海道サイコロキャラメル」として道内限定の観光土産に特化して生き残るケースがあります。キャラクターの商標や意匠権は厳格に維持されており、権利元は決してそれを手放していません。
第2の盲点は、パッケージのスペース効率と店頭POSデータのシビアな関係です。近年のコンビニエンスストアやドラッグストアの棚割競争は極限まで激化しています。商品のフレーバー名、機能性表示(「糖質オフ」「カカオポリフェノール増量」など)、アレルゲン表示を限られたパッケージ面積に収める必要が生じた結果、キャラクターの描画スペースが物理的に圧迫され、パッケージの裏面や側面に追いやられる事例が増加しています。消えたのではなく、「表面から見えにくくなった」だけというケースが多々あるのです。
また、製菓各社が最も警戒するのが商標の「不使用取消審判」のリスクです。日本の商標法では、登録商標を3年間まったく使用していない場合、第三者からの請求によって登録が取り消されるリスクが生じます。そのため、主力製品から外れたキャラクターであっても、企業は記念キャンペーン、社内ノベルティ、あるいは公式ウェブサイトの歴史紹介ページなどで計画的にキャラクターを使用し続け、権利を法的に防衛しています。