かつて世界最高峰のレストラン「エル・ブジ」を率い、ガストロノミー界に革命を起こした伝説のシェフ、フェラン・アドリア。彼もまた生ハムが持つ無限のポテンシャルに魅せられた一人だった。極薄にスライスされた肉の断面から漂う脂の甘みと旨味のバランスを、彼は「自然が作り出した完璧な調理法」と称賛した。
シェフたちのこだわりは、今や一般家庭のキッチンへとなだれ込んでいる。熟成によってタンパク質が分解され、アミノ酸の結晶となった白い粒(チロシン)は、旨味が最高潮に達した証拠だ。包丁を握り、自分の手で削り出すプロセスそのものが、日常の宴を特別な儀式へと変えていく。