コロちゃんコロッケの破天荒な成長劇と壮絶な破綻を語る上で欠かせないのが、創業者である小林幸生(こばやし ゆきお)氏の存在です。小林氏はもともと食肉流通や惣菜販売の荒波をくぐり抜けてきた生粋の商人であり、「誰でも気軽に買える揚げたてで美味しいコロッケを提供し、脱サラしたい人々に低資本で独立の機会を与えたい」という強烈な情熱からブランドを生み出しました。
黄色い店舗に描かれた可愛らしいあのコロッケのキャラクターデザインや、店舗をプレハブ工法で安く建てるコスト削減手法は、当時の飲食業界で極めて革新的なアイデアとして脚光を浴びました。小林氏はテレビの経済特番やビジネス誌のインタビューなどにもたびたび登場し、「庶民の味方」「不況下で急成長するカリスマ経営者」として時代の寵児となりました。
しかし、倒産前後の取材記録や関係者の証言によると、店舗数が500店を超えたあたりから経営の舵取りは混乱を極めていました。急増する店舗に食材供給を間に合わせるためメガ工場を建てたものの、現場の品質管理やオペレーション教育が追いつかず、本部と各オーナーとの間の信頼関係に亀裂が入っていきます。資金ショートが表面化した2007年夏、小林氏は名古屋地方裁判所へ自己破産を申請。負債総額は約40億円に上り、全国の加盟店オーナーに多大な混乱と負債を押し付ける結果となってしまいました。
破産後の小林氏のその後については、メディアの表舞台から完全に退き、自責の念を抱きながら一民間人として過ごしてきたことが確認されています。一時期は別の食品小売りや飲食プロデュースの現場でアドバイザーを務めていたという風説や、地元経済関係者の勉強会で「急激な自己過信と過大借入の恐ろしさ」を語ったという話も伝わっていますが、自身で再び大規模な飲食チェーンの代表に復帰することはありませんでした。栄華と挫折を一身に背負ったその軌跡は、日本のフランチャイズビジネス史におけるもっとも重い教訓として記録されています。