では、大人が日常的に下している「良い子・悪い子」の判定基準は、一体どこにあるのでしょうか。教育臨床や発達相談の現場を丹念に取材すると、極めて身勝手な大人の心理構造が浮かび上がってきます。
結論から言えば、世間一般で言われる「良い子」の多くは、「大人の手を煩わせず、指示通りに動き、大人の感情を逆撫でしない都合の良い子」を指しているケースが目立ちます。一方で、自己主張が激しかったり、理不尽なルールに疑問を呈したりする子どもは、容易に「手のかかる悪い子」としてカテゴリー分けされてしまいます。この「親のレッテル貼りが与える影響」は、子どもの脳と心に不可逆的な刷り込みを残します。
教育心理学には、指導者の期待によって学習者のパフォーマンスが向上する「ピグマリオン効果」と、逆に否定的な先入観を持たれることで実際に能力や意欲が低下してしまう「ゴーレム効果」という確立された理論があります。「あなたはやればできる良い子」という過剰なプレッシャーも、「どうせ言うことを聞かない悪い子」という決めつけも、どちらも子ども自身をありのままに見つめる視点を欠いています。大人の勝手な色眼鏡が、子どもの振る舞いをその通りの枠組みへと強制的に誘導してしまうのです。