散歩で日傘を使う女性に対して投げかけられる心無い言葉の一つに「自意識過剰」というレッテルがある。「モデル気取りで近所を歩いている」「誰もあなたの顔など見ていないのに大げさだ」といったネット上の揶揄は後を絶たない。しかし、日傘をさして歩く人の心理分析を紐解くと、そこには周囲が想像するような見栄やプライドとは全く異なる、切実な防衛本能が存在している。
第一に挙げられるのは、皮膚科学的な危機意識の定着だ。紫外線が引き起こす光老化(シミ・シワ・たるみ)や皮膚がんリスクに対する啓発が進んだ結果、特に30代〜50代の女性層を中心に「朝のわずか15分の散歩であっても、無防備に紫外線を浴びることは将来の健康と肌にとって取り返しのつかないダメージになる」という強い自衛意識が働いている。日焼け止めクリームだけでは防ぎきれない近赤外線や熱線、強烈な直射日光を遮断するためのツールとして日傘を選択しているに過ぎない。
第二に、猛暑下における「体感温度のコントロール」である。近年の遮光率100%日傘は、差すだけで木陰にいるような涼しさを生み出し、熱中症によるめまいや倦怠感を防ぐ医療的・体調管理的な役割を果たしている。日光過敏症やアトピー性皮膚炎、白内障予防など、医師から直射日光を避けるよう指示されているケースも珍しくない。
それにもかかわらず自意識過剰と思われる日傘行動の特徴としては、日傘で周囲との視線を遮断し、外界を拒絶するような歩き方をしてしまう点が挙げられる。日傘を低く構えて自らのプライベート空間(心理的バウンダリー)に閉じこもり、他者と目を合わせようとしない態度が、外から見ると「周囲を無視した傲慢な振る舞い」と受け取られてしまう。ここに、自衛目的の当事者と周囲の認識の決定的なギャップが存在する。