入場からゴングまでの約20分間は、格闘技の歴史においても稀に見る濃密な時間だった。赤コーナーから登場した武尊の表情には、K-1の看板を長年背負い続けてきた覚悟と執念が滲み出ていた。対する那須川天心は、キックボクシング無敗のまま有終の美を飾るべく、研ぎ澄まされた集中力でリングへと向かった。
花道を歩む両者の数分間、5万6000人を超える観客の視線と全世界のPPV視聴者の視線が一点に集中した。入場曲の重低音がドームの屋根を震わせ、両者がリング上で睨み合った数秒間は、時が止まったかのような錯覚すら覚える劇的な演出だった。