声が生まれる解剖学的プロセスの中心には、喉の深部に位置する喉頭が存在する。歌唱時、喉頭が過剰に吊り上がると声帯の振動面が狭まり、詰まったようなキンキン声になってしまう。この喉頭の不要な上下動を抑え、自然なポジションに安定させるカギを握るのが、お腹の深層に位置する筋肉、横隔膜である。
呼気によって押し上げられた空気が、リラックスした喉頭内で声帯を揺らす。これが美しい発声の基本原理だ。しかし、猫背や肩こりによって横隔膜の可動域が狭まると、人は不足した呼吸圧を補うために喉の筋肉を絞り込んでしまう。
日本音声言語医学会による一連の研究や学術報告でも、全身の筋緊張と喉頭懸垂機構の可動性の相関関係が指摘されている。つまり、体幹ストレッチによって呼吸筋を解放することこそが、喉の負担を激減させ、響きのある豊かな倍音を生み出す生理学的な最短ルートなのだ。