任侠の世界観と最も親和性が高かった音楽ジャンルが、日本の心の歌と称される演歌や歌謡曲である。特に北島三郎が歌い上げた『兄弟仁義』などの名曲は、人と人との絆や義理をテーマにし、全国的な大ヒットを記録した。
一般の演歌作品はあくまでフィクションとしての人間模様を描いたものであり、特定の反社会的組織を讃えるものではない。しかし、義理や盃、極道といったモチーフを扱う歌謡曲が多数存在したことで、一般大衆の頭の中で「任侠映画の主題歌」「ヒット演歌」「裏社会の組織歌」の境界線が曖昧になっていった背景がある。このジャンルが持っていた圧倒的な詩情とメロディの強さが、昭和という時代の熱量と深く結びついていたことは確かだ。