ネット上の掲示板やSNS言説を検証すると、ヘイトクライムに対して著しいバイアスや誤解が蔓延している。その典型的な論点をファクトに基づいて是正する。
誤解1:「単なる一般犯罪(放火や器物損壊)であり差別と結びつけるのは過剰反応」
これは犯罪の本質を見誤った誤謬だ。ヘイトクライムが極めて悪質とされる理由は、被害者個人の権利侵害にとどまらず、「同じ属性を持つコミュニティ全体に対する脅迫・テロリズム」として機能する点にある。1軒の民家が焼かれた事実の裏で、その地域に暮らす同胞全体が「次は自分が標的にされるのではないか」という極度の精神的監禁状態に追い込まれる。社会的影響の波及度が一般の器物損壊とは根本的に異なるのだ。
誤解2:「ヘイトスピーチ解消法があるから日本も十分に対策されている」
2016年に成立した「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律(ヘイトスピーチ解消法)」は、差別の不当性を宣言した「理念法」であり、直接の禁止規定や違反者に対する罰則を一切設けていない。当然ながら暴行や放火などの実力行使を取り締まる刑事罰条項は含まれておらず、法規制としてヘイトクライムを抑止する機能は果たせていない。