世間の不信感を決定づけたのが、2018年の日大悪質タックル事件と、その後に起きたアメリカンフットボール部員による違法薬物事件だ。事態の初期対応において、当時の幹部らが開いた会見は迷走を極め、危機管理の反面教師として連日テレビやネットで取り上げられた。不都合な事実を隠蔽しようとする姿勢や、後手後手に回る対応は、専門用語でいう「クライシスコミュニケーション」の失敗そのものであった。
さらに薬物問題では、大学幹部が証拠の保管を巡って二転三転の言い訳に終始し、事態を泥沼化させた。独自取材に応じた大学関係者は、「学内にリスク管理の専門家が何十人もいながら、本部の危機対応チームには誰一人としてアドバイスを求められなかった」と打ち明ける。調査報道が浮き彫りにしたのは、危機管理のノウハウを蓄積しながら自組織に適用できないという、あまりに皮肉な「内部の断絶」であった。