下弦の鬼について、ネット上では「上弦に比べて弱すぎる雑魚集団」と過小評価される傾向が少なくありません。しかし、作品の設定を深く精査すると、いくつかの重要な事実が見落とされていることが分かります。
第1の盲点は、下弦の鬼でも一般隊士にとっては国家規模の災害に等しいという点です。事実、那田蜘蛛山では十数名以上の鬼殺隊士が累の糸や蜘蛛の毒によって一瞬で全滅しています。相手が「柱」という人間側の最高戦力であったからこそ容易く討伐されただけであり、階級の低い隊士にとっては遭遇した時点で生還が絶望的な怪異でした。
第2の盲点は、唯一生き残りを許された下弦の壱・魘夢の心理戦術と血鬼術の凶悪さです。会議において、他の鬼たちが「逃げる」「弁解する」「力をねだる」という悪手を重ねて処刑される中、魘夢だけは無惨の殺意を正面から受け止め、他人の苦痛と死に陶酔する狂気を提示しました。
「夢の中に侵入し、無意識領域にある精神の核を破壊する」という魘夢の血鬼術は、柱である煉獄杏寿郎すら一時的に無力化寸前まで追い込みました。肉体的な力押しではなく、人間の脆い精神構造を直接破壊する能力の危険性は、十二鬼月全体を通じても屈指の凶悪さを誇っていたのです。