衛兵交代式を深く楽しむための鍵は、複数の拠点が連動する複雑な行進ダイナミクスを理解することにあります。現地を徹底検証すると、衛兵交代はバッキンガム宮殿単独のイベントではなく、セント・ジェームズ宮殿、ウェリントン兵舎の三位一体で展開されていることがよく分かります。
まず注目すべきは、歴史の古いセント・ジェームズ宮殿 衛兵行進です。セント・ジェームズ宮殿は現在も王室の公式な宮廷であり、ここに詰めている衛兵分遣隊(Detachment)が式典の口火を切ります。10:30、フリマリー・コートヤードにて整列と点呼が行われ、先導する士官の鋭い号令とともにモール(The Mall)へと繰り出します。観光客でごった返すバッキンガム宮殿正面とは対照的に、このルートは並木が美しく、比較的落ち着いた空気の中で衛兵の規律正しいステップを追跡鑑賞することが可能です。
そして最大の見どころを生み出すのが、ウェリントン兵舎 行進ルートです。バードケージ・ウォーク(Birdcage Walk)に面した兵舎から出撃する新衛兵本隊は、フル編成の軍楽隊を伴います。10:45を過ぎると兵舎ゲートが開き、ドラムメジャーの指揮のもと華々しいマーチングが始まります。部隊はバードケージ・ウォークからスパー・ロード(Spur Road)へと折れ、ヴィクトリア記念碑の南側を抜けてバッキンガム宮殿の南ゲート(センターゲートまたはサウスゲート)へと堂々たる入場を果たします。
式典が終わる11:35以降は、この動線が反転します。役目を終えた旧衛兵隊が宮殿の中央ゲートから退出し、再びスパー・ロードを経由してウェリントン兵舎へと凱旋行進します。多くの観光客は11:00の宮殿内式典が始まると満足して移動を始めますが、真の愛好家は11:30前後にウェリントン兵舎前へ先回りし、緊張感から解き放たれて兵舎へ帰還する衛兵たちの最終行進をリラックスした環境で見届けています。