タランティーノ作品の真骨頂である緻密な伏線と演出トラップは、中盤の山場である「地下酒場ラ・ルイジアヌ」のシークエンスに凝縮されています。
ドイツ将校に変装した英国人ヒコックス中尉が、ウイスキーを3杯注文する際に「人差し指・中指・薬指」を立てた瞬間、居合わせたゲシュタポのヘルストロム少佐に正体を見破られます。大陸(ドイツ)式では「親指・人差し指・中指」で3を示す習慣があるためです。このわずか1秒の指の仕草が引き金となり、凄惨な銃撃戦へと雪崩れ込んでいきます。
また、現場に残された「片方のハイヒール」と「サイン入りナプキン」をランダが回収し、後にブリジットの足に直接靴を履かせて裏切りを確信する展開は、童話『シンデレラ』のグロテスクなパロディです。物語の随所に散りばめられた細かな小道具や会話の違和感が、後半ですべて死線へのトリガーとして機能する脚本構成は見事というほかありません。