結婚祝いとして作られた楽曲が「卒業式の定番」として日本社会に決定的に定着した背景には、2つの強力なメディアカルチャーの介在がありました。
第一の契機は、映画監督の信藤三雄氏が手掛けた公式プロモーションビデオ(PV)の存在です。映像では、当時若手女優として頭角を現していた堀北真希が主人公の女子生徒役として出演。中学校の卒業式を終えた彼女が、姉の結婚式へと向かうストーリー仕立てになっており、「卒業」と「結婚」という2つの人生の節目がひとつの映像の中で見事に融合されました。制服姿の堀北真希が見せる凛とした眼差しとノスタルジックな映像美は、楽曲に強烈な「卒業のイメージ」を視覚的に植え付けることとなりました。
そして第二の決定打となったのが、2005年秋に放送されたフジテレビ系ドラマ『1リットルの涙』(沢尻エリカ主演)の挿入歌への起用です。難病と闘う主人公とクラスメイトたちが、合唱コンクールで心をひとつにして『3月9日』を歌い上げる第8話の劇中シーンは、社会的な大反響を呼びました。この放送を境に、全国の小・中・高校の音楽教諭や生徒たちから「卒業式や合唱コンクールでこの曲を歌いたい」という要望が殺到し、公式な合唱曲の楽譜(混声三部合唱・女声三部合唱)が次々と出版されるという異例の社会現象へと発展したのです。