痛む首筋に湿布を貼ったにもかかわらず、痛みがびくともしないばかりか悪化してしまう背景には、解剖学的なメカニズムの誤解が存在します。湿布が効かない最大の原因は、「炎症が起きている組織の深さ」と「貼る薬剤の到達深度」のギャップにあります。
寝違えの主病変は、皮膚の表面ではなく、頚椎を支える深層の筋肉(頭半棘筋や板状筋)、さらには頚椎椎間関節の関節包や靭帯といった深部組織で生じています。一般的な第1世代の冷湿布(サリチル酸メチル配合のパップ剤など)に含まれるメントール成分は、皮膚表面の冷感受容器を刺激して「冷たくて気持ちいい」感覚を生み出しますが、深さ数センチメートルに及ぶ深部筋肉の炎症カスケードを鎮火させるほどの浸透力は持ち合わせていません。
さらに深刻なのは、「湿布を貼った安心感から首を無理に動かしてしまう二次被害」です。湿布の局所麻酔的・清涼的な刺激によって一時的に痛みの知覚がマスクされると、本来安静を保つべき筋肉を不用意に動かし、微小断裂を起こした筋線維にさらなる物理的テンションをかけてしまいます。これが「湿布を貼ったのに午後になって余計に首が固まった」と感じる医学的なカラクリです。