土井善晴氏の料理人としての骨組みを語るうえで、父である料理研究家・土井勝氏の存在を外すことはできない。昭和の家庭料理を牽引し、日本の食卓に「正しく美味しい和食」を根付かせた第一人者である父の背中を見て育った彼は、受け継いだ伝統の技を現代の感性へと見事にアップデートさせてきた。
父・土井勝氏が大切にした「素材を愛しみ、味付けに嘘をつかない」という姿勢は、息子の代になっても決して揺らぐことはない。日本の伝統食文化が薄れつつあると言われる今だからこそ、親から子へ、そして孫へと受け継がれる「家庭の味」の価値が再評価されている。父子の歩みは、日本の食の歴史そのものと言っても過言ではない。