インターネット上の古い文献や誤った噂を目にして「短命な病気なのではないか」と強い恐怖を感じる当事者・家族は少なくありません。しかし、結論から言えば、歌舞伎症候群の寿命は、適切な合併症管理が行われていれば一般的な平均余命と大きな差はないというのが現代医療の統一見解です。
過去に「予後不良」という印象が持たれた主因は、約40〜50%に合併する先天性心疾患(大動脈縮窄複合、心室中隔欠損症、心房中隔欠損症など)や、重度の免疫不全による乳幼児期の感染症が適切にコントロールできなかった時代背景にあります。小児循環器外科の手術成績が向上し、免疫グロブリン補充療法や感染症治療が確立された現在、小児期を乗り越えた患者の多くが成人期へと移行しています。
歌舞伎症候群の大人になった現在の経過を追跡した国内外のコホート研究によると、成人に達した患者の多くが作業所や就労継続支援施設、あるいは特例子会社などで社会生活を営んでいます。思春期以降は基礎代謝の低下や食行動の偏りから肥満を呈しやすくなること、また成人期特有の合併症として特発性血小板減少性紫斑病(ITP)や橋本病などの自己免疫疾患を発症しやすいことが明らかになっています。小児科から成人内科・総合診療科へのシームレスな「移行医療」が機能しているかどうかが、成人期の健康維持における最大のポイントです。