神田駅西口の路地裏、雑居ビルの2階へ続く細い階段を登ると、バターと炒め玉ねぎの甘く芳醇な香りが漂ってきます。洋食激戦区の神田において、なぜルー・ド・メールはこれほどまでに熱狂的な支持を集め続けるのか。その答えは、オーナーシェフである鈴木清氏が歩んできたフレンチと洋食の歴史そのものにあります。
鈴木シェフは、京橋の伝説的フランス料理店「ドンピエール」で初代総料理長を務め、日本の洋食文化を一段上のステージへと押し上げた重鎮です。独立してルー・ド・メールを開業して以来、シェフが一貫して貫いているのは「妥協のない下処理と丁寧な火入れ」という愚直なまでの基本姿勢です。
「どんなに忙しくても、スープひとさじ、肉の煮込み加減ひとつに自分の目を光らせる」という鈴木シェフの哲学通り、厨房から供される料理には、大量生産のチェーン店では決して再現できない職人の魂が宿っています。神田カレー百名店をはじめとする各種アワードに選ばれ続けている実績は、一過性のブームではなく、何十年にもわたる技術の蓄積がもたらした必然と言えます。