経済的な障壁は極めて現実的です。スイス尊厳死の費用相場を試算すると、団体への寄付金・手続料に加え、渡航費や現地滞在費を含めて総額250万〜350万円程度の自己資金が求められます。為替相場の変動、とりわけスイスフラン高・円安の進行は、日本からの渡航希望者にとって重い足枷となっています。
煩雑を極めるのが海外渡航による尊厳死手続きです。まず、日本の主治医による詳細な診療情報提供書を取り寄せ、それを公認翻訳者によって英語またはドイツ語に翻訳しなければなりません。さらに戸籍謄本などの公的書類に外務省のアポスティーユ(公証)を取得し、現地団体へ提出します。
書類審査を通過すると「暫定的な受諾(Green Light)」が下りますが、そこから現地での日程調整が始まります。進行性の難病患者にとって、羽田や成田からスイス・チューリッヒまでの十数時間に及ぶフライトに耐えられる身体状態を維持できるかという時間との闘いが立ちはだかります。病状が悪化して飛行機に乗れなくなれば、その時点で選択肢は絶たれてしまいます。