家族や親族にALS患者がいる場合、最も不安視されるのが「遺伝する確率」です。疫学データにおいて、ALSは大きく2つのタイプに分類されます。
日本国内における発症者の約90〜95%は血縁者に患者がいない「孤発性ALS」であり、親から子へ直接的に病気が受け継がれるものではありません。残る約5〜10%が遺伝的背景を持つ「家族性ALS」と診断されます。
家族性ALSにおいて同定されている主な原因遺伝子には、以下のような特徴があります。
日本人の家族性ALSで最も頻度が高いのが「SOD1(スーパーオキシドジスムターゼ1)遺伝子変異」(家族性の約20〜30%)です。活性酸素を除去する酵素であるSOD1が変異により毒性を持つ異常タンパク質へと変異し、神経細胞内に沈着します。
欧米では最も多い「C9orf72遺伝子のリピート伸長変異」は、日本国内では極めて稀である一方、「TARDBP(TDP-43)遺伝子変異」や「FUS遺伝子変異」などが国内の症例から一定数報告されています。
家族性ALSの多くは「常染色体顕性(優性)遺伝」の形式をとるため、原因遺伝子を持つ親から子へ変異が受け継がれる確率は統計上50%となります。しかし、遺伝子変異を受け継いだからといって生涯のうちに必ず100%発症するとは限らず、発症のしやすさ(浸透率)には個人差があります。近年は専門医療機関における遺伝カウンセリング体制が整っており、リスクの正確な評価と心理的ケアを同時に受ける体制が推奨されています。