恵文社を語る上で外せないのが、かつて店長を務めた堀部篤史氏が築き上げた選書思考の遺産である。売上ランキングや話題性だけに頼らず、文脈やテーマによって本同士を棚の上で対話させる手法。この美学は、現在のスタッフにも脈々と受け継がれている。
一般的な大型書店では、ジャンルごとに分類された棚に背表紙が几帳面に並ぶ。しかし恵文社一乗寺店の本棚は全く異なる。料理本と詩集、民芸の写真集と哲学的エッセイが自然な脈絡で隣り合い、視線を移動させるたびに予期せぬ発見がある。全国の独立系書店が手本にするこの独自の陳列美学は、ただ本を売るのではなく「本のある暮らしや時間」を提案する姿勢そのものだ。