当時、キズナアイのプロデュースを手掛けていたのはActiv8株式会社である。同社が推し進めた多重化の背景には、単一のタスクや言語圏に依存しない「IPとしてのキズナアイ」のグローバルスケール化があった。グローバル展開を見据えたBilibiliでの展開強化や、複数人による並行配信の実現は、ビジネス的側面から見れば合理的な選択に思えたのかもしれない。
だが、バーチャルYouTuberの本質は「キャラクターと中の人(演者)の不可分な結びつき」にある。ファンの愛着は、声やニュアンスを含む演者のパーソナリティそのものに向けられていた。こうした中で注目を集めたのが、長年キズナアイのボイスモデルを務めていた声優の春日望だ。2026年4月、春日望自身がキズナアイのアドバイザーとして関与し、自身のボイスモデルであることを公表。同時にアドバイザリーとして運営に参画することが発表され、分裂騒動は大きな転換点を迎えることとなった。