教団の崩壊後、公の場に姿を現し最も精力的に自らの言葉で発信を行ってきた人物の一人が、三女の松本麗華氏だ。かつて教団内部で「アーチャリー」の精神名を与えられ、幼少期から隔離された特殊な環境で育った彼女は、成長とともに父親である麻原彰晃の容疑や罪の重さ、そして世間が抱く凶悪な教祖像との著しい乖離に苦しみ抜いてきた。
彼女が著した手記『止まった時計』は、事件の当事者家族の視点から描かれた衝撃的な社会派ノンフィクションとして、言論界に大きな波紋を呼んだ。教祖の逮捕という事態によって一瞬にして人生の時間が凍りついたかのような絶望と、その後に待ち受けていた壮絶な排除の歴史が生々しく記録されている。彼女をはじめとする娘たちの現在は、過去のトラウマに囚われるだけでなく、いかにして過去を受け入れ、社会との健全な関係を再構築するかという過酷な試行錯誤のプロセスそのものである。