頭上を覆う見事な桜のアーチ。だが、その足元に目を向けると、樹幹に包帯のような保護材が巻かれ、土壌改良の杭が打ち込まれていることに気づく。現在、川沿いに立ち並ぶ樹木の多くは樹齢60年を超え、人間でいえば高齢期を迎えているのだ。
河川管理者である東京都建設局と地元行政は、倒木事故の未然防止と景観維持という難題に直面している。近年進められているのは、枯れ枝の剪定や土壌の通気性改善にとどまらない。弱った木を一本ずつ慎重に診断し、後代へと命を繋ぐ計画的な植え替えプロジェクトだ。「切るべきか、残すべきか」。地域住民や樹木医を交えた対話は今も続けられており、私たちが毎年何気なく見上げる壮麗な花の帯は、官民一体となった泥臭い保全活動の上に成り立っている。