ブームのピーク時、高級食パンは「1本1,000円前後の手軽な贅沢」として空前のヒットを記録した。自分へのご褒美はもちろん、ちょっとした手土産としての需要が爆発し、都市部から地方の幹線道路沿いまで出店ラッシュが続いた。しかし、その狂騒曲は数年と持たなかった。
ブーム終焉の最大の真相は、「日常食」と「特別感」のギャップにある。食パンは本来、毎朝の食卓に並ぶ極めて日常的な食材だ。いくら美味しくても、毎日の朝食に1本1,000円を払い続ける層は限られる。初期の購買行動を支えていたのは「一度食べてみたい」「SNSに投稿したい」というお試し客であり、彼らが一巡したタイミングで急激な客数減少が見舞ったのだ。
さらに2020年代半ばにかけて拍車をかけたのが、小麦粉や油脂類、光熱費などの世界的な原材料高騰である。高い粗利益率を前提としたビジネスモデルは急激に圧迫され、単一商品しか扱わない専門店の脆さが露呈することとなった。