独占取材に応じた総料理長は、眼光を鋭くしながらこう語る。「古典的な技法を軽んじるわけではありません。しかし、昔と同じことを繰り返すだけでは食材の可能性を閉ざしてしまう」。一見すると突飛に見える組み合わせの裏には、膨大な試作と科学的な視点に基づくデータがある。
出汁ひとつとっても、昆布の抽出温度を一度単位で調整し、鰹節の削り厚を毎朝の湿度に合わせて変える。徹底したこだわりこそが、他店の追随を許さない味付けの骨組みとなっているのだ。仕込みの手間を惜しまない姿勢が、皿の上の世界へ確かな説得力を与えている。