映画版『ハリー・ポッター』シリーズにおけるシリウスの絶大な人気を決定づけたのは、英国屈指の演技派カメレオン俳優、ゲイリー・オールドマンによる圧倒的な役作りでした。
当時の特番インタビューや公式映画メイキング映像において、オールドマンは「シリウスは単なる狂人でも、聖人でもない。激しいトラウマを抱え、心の成長を12年間止められたまま大人になってしまった男だ」と分析しています。貴族出身特有の洗練された佇まいを残しながらも、極限状態を生き延びた獣のような獰猛さ、そしてハリーを見つめる瞳に宿る痛々しいほどの情愛。オールドマンの繊細な表情設計は、原作読者が思い描いていた「危うくも魅力的なシリウス像」を銀幕上に見事に具現化させました。
そして日本国内のファンにとって忘れがたいのが、シリウス・ブラック 声優吹き替えを担当したベテラン名優・辻親八氏の存在です。ハスキーで深みのある低音ボイスは、アズカバンで声帯すら枯れ果てた男の悲哀をリアルに表現。第3作終盤の「叫びの屋敷」における狂気と哀愁の叫び、そして第5作で見せたハリーへの包容力ある語り口など、吹き替え版ならではの重厚な説得力で多くの視聴者の胸を打ちました。なお、青年時代の回想シーンでは日野聡氏が声を担当しており、傲慢さと若き日の才気を鮮烈に演じ分けています。