かぐや姫が昇天した後、残された帝の行動が『竹取物語』の壮大なクライマックスを形成します。
帝は、かぐや姫から託された「不死の薬」と、彼女への想いを綴った手紙を手に取り、深く嘆き悲しみました。不老不死は、古今東西の権力者が何よりも渇望した究極の宝です。しかし帝は、「愛する姫がこの世にいないのに、自分一人だけが永遠の命を得て何になろうか」と悟ります。
帝は使者である調石津麿(つきのいわたまろ)を召し、次のように命じました。
「この国で最も天に近い山はどこか」
「駿河国(現在の静岡県)にある山が、都からも近く、天に最も近い山でございます」
帝はその山(現在の富士山)の頂上に手紙と不死の薬を持参させ、山頂で火をつけて焼かせました。愛する姫がいる天の月へ、手紙と自らの想いが煙となって届くことを願ったのです。
この伝承から、「不死の薬を焼いた山」=「不死(ふし)の山」と呼ばれるようになり、さらに多くの武士(つわもの)を引き連れて登ったことから「士に富む山=富士山」と名付けられたと物語は結ばれています。また、山頂から立ち上り続ける噴煙は、帝のかぐや姫に対する消えることのない恋心の炎であると語り継がれました。
『竹取物語』のその後において、帝は深い喪失感を抱えながらも、姫との精神的な絆を心に刻み、国家を治める日常へと戻っていきました。権力や現世利益よりも「愛の記憶」を選び取った帝の哀愁は、千年以上を経た現代の読者の胸にも強く迫ります。