菊池の作品集やコラムを開くと、まず目に飛び込んでくるのは緻密でありながら温かみのあるスケッチだ。お気に入りの古着の靴、行きつけの喫茶店で出された厚切りトースト、旅先で出会った看板——。写真一枚で済ませられる時代だからこそ、彼女が時間をかけてペンを走らせる行為そのものに意味が宿る。
観察対象に対する愛おしさが、線のひとつひとつに滲み出る。その眼差しは、対象をただ消費するのではなく、自身の生活にどう引き寄せるかという問いを投げてくる。2026年、生成AIが多様な画像を瞬時に生成できる世界において、彼女の生々しい手仕事の手触りは、逆説的にクリエイティビティの原点を思い出させてくれるのだ。