『サラリーマン山崎シゲル』の生みの親である作者の田中光(たなかひかる)は、単なる漫画家の枠にとどまらない極めて多面的なキャリアを持つクリエイターです。
京都府出身の田中光は、もともとお笑い芸人として活動をスタートさせました。漫才コンビ「ゼミナールキッチン」などを経てピン芸人となり、現在はサンドウィッチマンらが所属するグレープカンパニーに籍を置いています。芸人として舞台上で培った「フリとオチ」の厳密なタイミング感覚、観客の視線をどこに誘導し、どの瞬間に裏切るかという舞台演出論が、1コマ漫画という極小のフォーマットに見事に凝縮されています。
過去のメディアインタビューや自著で田中自身が明かしているように、山崎シゲルの創作は「誰かに見せるためというより、自分が面白いと思う不条理を純粋に形にする」というパーソナルな衝動から始まっています。SNS上で突如として投稿された1枚のイラストは、説明的なセリフを極限まで削ぎ落とし、絵画としての構図力と視覚的インパクトで見る者を一瞬でロックしました。
さらに田中光の特筆すべき才能は、絵本作家としての側面にも表れています。『ぱんつこれくしょん』や、文字通り猫がいるだけのナンセンスを極めた『ねこいる!』など、子どもから大人までを爆笑させる絵本を次々と世に送り出し、権威ある絵本賞で上位に選出されるなど確固たる評価を獲得しました。言葉の意味性に過度に依存せず、ビジュアルのインパクトと不条理の心地よさで直感的に笑わせる手法は、まさに『サラリーマン山崎シゲル』の文法と直結しています。