柳井正氏が築き上げたアパレル帝国の行方を語る上で、長男・柳井一海氏と次男・柳井康治氏の立ち位置を理解することは欠かせない。二人は現在、株式会社ファーストリテイリングの取締役として名を連ねている。だが、彼らが就いているのは日々の現場オペレーションを直接指揮する執行役員ではなく、大所高所から経営を監督する取締役のポストだ。
創業者が掲げた「世襲の否定」は、決して息子たちを排除するという意味ではない。現場の最高経営責任者(CEO)としての業務執行と、株主利益を守る企業統治(ガバナンス)を明確に分けること。これこそが、柳井家が導き出した現実的な解答だった。
グループの持ち株比率を鑑みれば、柳井一族が筆頭株主である構造に変わりはない。息子たちはオーナー家としての責任を果たしつつ、経営陣を監視・サポートするボードメンバーとしてグループを支える。新経営体制の全貌は、ファミリービジネスの強みである長期的視野と、プロ経営者によるスピード感ある現場執行を融合させたハイブリッド型ガバナンスにある。