北九州芸術劇場の最大の特徴は、性格の異なる「大ホール」「中劇場」「小劇場」という3つの空間が共存している点にあります。どの空間で上演されるかによって、観客に求められる座席選びのセオリーは180度変化します。
まず、大ホールのキャパシティは1,269席を誇ります。クラシックコンサートや本格的なオペラ、大規模ミュージカルに対応する3層の馬蹄型バルコニー構造が採用されており、音の響きは九州屈指の美しさを誇ります。座席表において1階席は傾斜が緩やかな前方(1〜7列付近)よりも、段差がしっかりつく中通路後方(12列目以降)のほうが、前の観客の頭に視界を遮られにくくセンターラインの抜けが良好です。2階席・3階席はステージ全体を俯瞰するダイナミックな景観を楽しめる反面、3階席の最前列付近は安全確保のための手すりが舞台前方の視界と干渉しやすい傾向があります。役者の微細な表情までオペラグラスなしで追いたい場合は、1階15列目以内を死守するのが賢明です。
対照的に、ストレートプレイやプロデュース公演の主舞台となる中劇場(客席数700席)は、客席と舞台の緊密な一体感を追求した設計が際立ちます。扇形に広がる客席配置はどの位置からも死角が生じにくく、最後列であっても舞台までの距離感は驚くほど近く感じられます。演劇ファンから「見切れ席が極めて少ない」と高く評価される理由もここにあります。舞台の熱量をダイレクトに浴びたい場合は、演者の視線とほぼ同じ高さを保てる中劇場1階の6〜10列目付近が特等席として支持を集めています。
そして、約200席前後の可動式座席を備える小劇場は、空間演出によってフラットにも段床にもレイアウトを変えられる実験的ブラックボックスです。俳優の息遣いや床を踏み鳴らす振動まで肌で体感できる距離感にあり、大手商業演劇では決して味わえない濃密な演劇体験を約束してくれます。