結論から述べれば、ストレートネック枕なし悪化の理由は人体の骨格構造そのものに刻まれている。人間の頭部は体重の約10%、成人であれば5〜6kgもの重量を誇る。健康な成人の頸椎は、この重たい頭部を効率よく分散して支えるため、前方に向かって30〜40度緩やかに湾曲する「生理的前弯(C字カーブ)」を描いている。しかし、デスクワークなどで前傾姿勢を取り続けると、この前弯が消失して骨が一直線に並ぶストレートネック(いわゆるスマホ首)へと変形していく。
「枕を外せば、頭の重みで首が自然と後ろへ反り、失われたカーブが元に戻るのではないか」――ネット上で拡散されている言説の論拠は、おおむねこの単純な発想に集約される。だが、これは生体力学的に見て極めて短絡的な誤謬だ。
敷布団の上に後頭部を直に置いた状態では、後頭部と背中(肩甲骨付近)の2点のみが接地し、首の裏側には数センチメートルの空間(頸部間隙)が宙に浮く形となる。支えを完全に失った首の筋肉(僧帽筋上部線維や頭半棘筋、肩甲挙筋)は、睡眠中も無意識のうちに頭部を支えようと過度の緊張を強いられ続ける。この状態が首の痛み枕なし逆効果の真相であり、筋緊張の慢性化だけでなく、椎間板への異常な偏荷重を招き、神経根を刺激して鋭い放散痛や手足のしびれを引き起こす決定打となってしまうのだ。