将来を不安視する薬剤師をさらに追い詰めているのが、「2045年には薬剤師が最大12万人余剰になる」という厚生労働省の需給推計に端を発する薬剤師余りと将来性の真相です。新設私立薬学部の乱立によって年間の国家試験合格者が高止まりを続ける中、「いずれ買い手市場になり、さらに給料が下がるのではないか」という懸念が広がっています。
しかし、取材を進めると、この言説には明確な「地域格差」という盲点が存在することが分かります。東京、大阪、福岡などの大都市圏や、薬学部が密集する地方都市では確かに飽和状態にあり、パート時給の下落や正社員求人の倍率上昇が起きています。一方、東北や北陸、中国・四国地方の地方都市や郊外の調剤薬局・ドラッグストアでは、依然として深刻な薬剤師不足が続いています。
地方の薬局では、求職者を確保するために「年収650万〜750万円」の好条件を提示している事例が多数あります。つまり、日本全国で均一に余っているのではなく、「都市部の供給過多」と「地方の圧倒的不足」という局所的なアンバランスが生じているにすぎません。「薬剤師全体が一律に食いっぱぐれる」というのはミスリードであり、居住地や働き方に柔軟性を持てるかどうかが待遇を分ける分水嶺となっています。