日常会話で頻出する表現だからこそ、慣用句の正しい使い方を弁えておかなければ、思わぬ対人トラブルやマナー違反を引き起こすリスクがあります。特に注意すべきは、この言葉が持つ「評価・揶揄」のニュアンスです。
「借りてきた猫」には、「普段は威勢がいい、あるいは騒がしいのに、場所が変わると意気地がなくなる」という皮肉や冷やかしのトーンが少なからず含まれます。そのため、上司や取引先の担当者など、目上の人間に対して面と向かって使うのは明白なマナー違反です。相手を「小心者」「内弁慶」と間接的に侮辱することと同義になりかねません。
基本的には、「自分自身の至らなさを自虐・謙遜として語る場合」、もしくは「気心の知れた同僚や後輩の緊張をほぐすために愛着を込めて使う場合」に限定するのが大人の言語作法です。以下に、ビジネスおよび日常で役立つ借りてきた猫の例文と使い方を提示します。
【自分に対して使う場合(自虐・謙遜のニュアンス)】
・「普段は偉そうなことを言っていますが、昨日の役員会議では完全に借りてきた猫になってしまい、一言も反論できませんでした」
・「初めての海外カンファレンスに参加したものの、ネイティブの議論のスピードに圧倒されて借りてきた猫のように小さくなっていました」
【同僚や親しい他者を描写する場合(観察・フォローのニュアンス)】
・「普段のオフィスではムードメーカーの彼だが、他社とのアライアンス交渉の場では借りてきた猫のように緊張した面持ちだった」
・「婚約者の両親と初めて会った際、彼が借りてきた猫のように直立不動でお茶を飲んでいた姿が印象的だった」
適切な場面で自身の失敗談として自己開示に使えば、「プライドが高くて近寄りがたい人」という印象を和らげ、人間味を感じさせる効果的なコミュニケーションツールとして機能します。