読売ジャイアンツが監督交代の局面を迎えるたび、あるいはWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の監督選考が動くたびに、読売グループ本社や日本野球機構(NPB)側から非公式な打診が行われてきた事実は、複数のメディアや球界関係者の証言で一致しています。それでもなお、松井氏が首を縦に振らない背景には、4つの明確な理由が存在します。
第1の要因は、「ニューヨークにおける生活基盤と家族の教育環境」です。松井氏は2008年に結婚後、長年にわたりマンハッタン近郊を生活の拠点として定めています。育ち盛りの子どもたちの学業やプライバシーを守るため、日本メディアの過度な狂騒から距離を置く選択は、父親としての揺るぎない最優先事項となっています。
第2の要因は、2015年から務める「ニューヨーク・ヤンキースGM特別アドバイザー」としての高い充実度です。ブライアン・キャッシュマンGMの右腕として、マイナーリーグ傘下の各拠点を巡回し、将来のメジャーリーガーを育成する指導現場に深いやりがいを見出しています。日本のトップチームを率いる重圧よりも、純粋に「打撃技術と野球への姿勢」を伝える教育者としてのポジションを愛着を持って継続しています。
第3に挙げられるのが、「日本特有の過熱報道と全責任を背負わされる監督像への違和感」です。メジャーリーグではフロント(編成部門)とフィールド(監督・コーチ)の役割分担が明確ですが、日本球界では勝敗だけでなく興行や広報、スキャンダル対応まで監督個人に過度な負担が集中します。この構造的プレッシャーを冷静に見極めている点も辞退の大きな要因です。
そして第4に、松井氏自身が立ち上げた「松井55ベースボール財団」を通じた日米の子ども向け野球教室に強い使命感を抱いている点です。プロの勝負の世界よりも、野球人口減少に歯止めをかける草の根活動にライフワークを見出していることが、現場復帰を急がない最大の理由となっています。