美瑛の美しい景観を巡る上で、今最も深刻な社会課題となっているのが観光マナーと農業被害の衝突です。SNS映えを狙った一部の旅行者による私有農地への無断立ち入りが後を絶たず、地域農業に計り知れない打撃を与えています。
ネット上の写真や投稿を見て「靴で少し土を踏むくらいなら問題ないだろう」と誤解している人が少なくありません。しかし、美瑛町農業協同組合(JAびえい)や地元農家が警鐘を鳴らす通り、靴の裏に付着した目に見えない病原菌(ジャガイモシストセンチュウや土壌伝染性病害など)が農地に持ち込まれると、その畑全体で作物が全滅し、土壌消毒や作付け制限で数年間にわたり数百万円規模の損害が発生します。
過去には、観光客の無断侵入や路上駐車のトラブルに苦悩した地元の農家が、苦渋の決断として有名だった「哲学の木」を倒木リスクや農業保護のために伐採せざるを得なくなった悲しい歴史が存在します。景観を守るために美瑛町では「農地立ち入り禁止(Keep out of agricultural fields)」の啓発看板を多言語で設置し、厳格なルール遵守を呼びかけています。
撮影や見学を行う際は、「アスファルト舗装された公道から一歩も出ない」「農作業トラクターの通行を妨げる路上駐車は絶対にしない」「雪原の下にも作物が植えられているため冬でも畑に入らない」という鉄則を必ず守らなければなりません。白銀の雪景であっても、雪の下には越冬中の秋まき小麦が芽吹いており、踏み固められると枯死してしまいます。