2009年12月31日、第60回NHK紅白歌合戦の放送中に起こった出来事は、日本のエンターテインメント界における最大のサプライズの一つとして語り継がれています。白組の歌手陣が並ぶNHKホールのステージに突如としてスモークが立ち込め、司会の中居正広氏が緊張した面持ちで「ビッグサプライズです」とコールすると、マイクスタンドを携えた矢沢永吉が姿を現しました。
当時、矢沢永吉の紅白出演情報はマスコミ各社に対しても一切伏せられていました。番組関係者への取材によると、リハーサル時もスタッフを最小限に絞り、関係者用パスの配布や当日の動線管理に至るまで、暗号名(コードネーム)が用いられるほどの厳戒態勢(情報統制)が敷かれていたといいます。
この歴史的な出演が実現した背景には、2つの大きな要因がありました。1つ目は、矢沢永吉自身が2009年に還暦(60歳)という人生の大きな節目を迎えていた点です。アルバムリリースや東京ドーム公演など精力的な挑戦を続けるなかで、「お茶の間で応援してくれる全国のファンへダイレクトに感謝の歌を届ける」という意識が合致しました。
2つ目は、NHK制作スタッフによる長年の熱心なオファーと、生演奏の音響・ステージングに対する徹底的な環境整備です。妥協を許さない矢沢のライブクオリティを忠実に生放送で再現できるよう、技術陣が万全の体制を約束したことが、長年の交渉を結実させた決定打となりました。