中盤のMCで、彼女は飾らない言葉で客席に語りかけた。「今日、この場所で皆さんとお会いできたことは、私にとって小さな奇跡です」。その一言に、会場からは割れんばかりの拍手が送られた。決して大げさに苦難を語るわけではない。ただ、目の前の日常がいかに愛おしいかを静かに伝える姿に、目頭を押さえるファンの姿がそこかしこで見受けられた。
そのMCに続いて披露されたバラードナンバーは、以前にも増して強い説得力を帯びていた。言葉の端々に宿る感情のグラデーション。悲しみを知る人だけが歌える優しさが、聴く者の心の奥深くに染み渡っていく。