春日八郎が遺した膨大なレパートリーの中から、レコード売上実績、音楽的影響力、そしてファンの支持率をもとに選出した代表曲ランキングを紹介します。いずれの楽曲も、単なるヒット曲の枠を超えて昭和という時代の空気を決定づけたマスターピースです。
第1位:『別れの一本杉』(1955年)
作詞・高野公男、作曲・船村徹の黄金コンビが手掛けた、戦後歌謡の金字塔です。「泣けた 泣けた こらえきれずに 泣けたっけ」という冒頭のフレーズは、故郷に母や初恋の人を残して都会の片隅で懸命に働く若者たちの涙を絞り取りました。哀愁に満ちた旋律と春日の抑制された美声が見事に融合し、本格演歌の幕開けを告げた記念碑的作品です。
第2位:『お富さん』(1954年)
歌舞伎の演目『与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)』を題材にした軽快なリズム歌謡。発売からわずか数か月で記録的な大ヒットとなり、街角のいたる所で「死んだはずだよ お富さん」の歌声が響き渡りました。敗戦の傷痕がまだ色濃かった日本社会を一気に明るく元気づけた、昭和20年代最大の社会現象曲です。
第3位:『赤いランプの終列車』(1952年)
下積み生活の長かった春日八郎が一躍スターダムに駆け上がるきっかけとなった出世作です。夜のプラットホームを舞台にした切ない別れの情景を、伸びやかなハイトーンボイスで歌い上げ、50万枚を超える大ヒットを記録しました。
第4位:『長崎の女(ひと)』(1963年)
異国情緒あふれる長崎の街を舞台にしたご当地ソングの名作。大人の哀愁と色気を感じさせる円熟期の歌唱が光り、春日の歌世界の広さを証明したミリオンセラーです。
第5位:『苦手なんだよ』(1956年)/『あれから十年たったのかな』(1967年)
親しみやすいコミカルな味を見せた佳作から、人生の哀歓を静かに振り返る円熟のバラードまで、春日八郎という表現者の奥深さを物語る重要作です。