「100ml程度だとグラスの底のほうに少し入っているだけで寂しく見える」と感じる人もいるはずだ。その違和感の原因は、現代のワイングラスが持つ巨大な総容量にある。
オーストリアの名門グラスメーカーリーデル(RIEDEL)をはじめとする本格的なワイングラスの標準容量を調べると、一般的なボルドー型やカベルネ用グラスの容積は約600〜800ml、大ぶりなブルゴーニュ型に至っては900ml前後に達するものもある。つまり、ワイングラス1脚の容積は、フルボトル1本が丸ごと入ってしまうほど大きいのだ。
安価な大衆食堂などで使われる小ぶりな汎用グラス(容量250〜350ml程度)であれば、半分注ぐと約120〜150mlになり、偶然にも適量に近づく。しかし、本格的なテイスティンググラスで「半分」まで注いでしまえば、それだけで300〜450mlものワインが入ってしまう計算になる。これではビールのロング缶を注いだような状態であり、香りを楽しむどころか、重くてグラスを傾けることすら困難になる。
グラスが大きく作られているのは、決して大量に酒を注ぐためではない。香りを溜め込むための「余白」を贅沢に確保するためにこそ、ボウル部分は大きく設計されているのだ。