「卒業式で袴を着せたい」と考える保護者がいる一方で、教育委員会や学校長名義で「卒業式における和装(袴)の自粛について」という文書が配布されるケースが全国で相次いでいます。華美な見た目への批判だけでなく、学校現場が禁止に踏み切る背景には切実な安全面・運営面の実情が存在します。
第一の理由は、安全性の確保と避難誘導の困難さです。慣れない草履や長めの袴丈により、体育館のステージ階段で裾を踏んで転倒する事故や、万が一の災害発生時に迅速な避難行動が取れないというリスクが現場から報告されています。
第二に挙げられるのが、長時間の式典による児童の体調不良です。専門の着付け店を予約した場合、当日の朝5時台から着付けやヘアセットを強いられるケースが珍しくありません。帯の過度な締め付けと緊張が重なり、式典中に貧血や気分不良を起こして途中退場を余儀なくされる児童が毎年後を絶ちません。
さらに、洋式・和式トイレでの所作や着崩れへの対応も教職員にとって大きな負担となっています。教員は着付けの専門家ではないため、式典直前に着崩れた袴を直すことができず、児童本人が恥ずかしい思いをする場面も散見されます。家庭間の過度な費用競争や経済的格差の可視化を防ぐ観点からも、公立校を中心に自粛要請が定着しつつあります。自宅で手軽に着付けられるキャサリンコテージなどの簡易袴セットを検討する場合でも、事前に学校側の方針を必ず確認することが不可欠です。