SNSや知恵袋、各種料理コミュニティを調査すると、味噌の常温保存に関するトラブルや失敗談は年間を通じて後を絶たない。そこから見えてくるのは、消費者が抱く「昔ながらの知恵」と「現代の製品・環境」の強烈なミスマッチだ。
「実家では床下収納に味噌樽を置きっぱなしにしていたから大丈夫だと思っていたら、シンク下の棚に置いたプラパックの味噌が半年で真っ黒になり、味噌汁を作ったら家族から『味が酸っぱくて変』とクレームが入った」という40代主婦の声は典型的だ。昔ながらの木樽仕込みの味噌は、塩分濃度が13%〜15%以上と極めて高く、冷暗所でゆっくり熟成させることを前提としていた。しかし、現代のスーパーで主流の減塩味噌(塩分8%〜10%前後)やダシ入り味噌を現代住宅のシンク下に置けば、短期間で変質するのは自明の理である。
また、単身世帯の20代男性からは「一人暮らしを始めてから自炊頻度が減り、開封済みの味噌をキッチンワゴンに1年放置していた。久しぶりに蓋を開けたら、表面に白い膜がびっしり張り、中身から異臭が漂っていた」という報告もある。味噌は保存食という過信から、調味料棚の奥底で忘れ去られ、不可逆的な劣化を遂げるケースが多発しているのが実情だ。