インターネット上の解説記事やSNSでは、「並びにの方が丁寧な響きがあるため、重要な語句には並びにを使うべき」「ビジネスメールでは『及び』は堅苦しいので使わない方がよい」といった俗説が散見されます。しかし、これらは文法規律や実務慣行からかけ離れた誤解です。
「並びに」は敬語でも丁寧語でもなく、純粋な論理構造を示す構文パーツに過ぎません。丁寧さを演出しようとして「社長様並びに役員様」などと階層のない単純並列で使うと、公用文ルールを知る読み手には稚拙な印象を与えてしまいます。
【プロの結論】厳密な使い分けを遵守すべき場面と平易さを優先すべき場面の判断基準
文書を作成する際には、媒体の性質と読み手の文脈に応じた明確な切り分けが求められます。
【厳密な階層ルールを徹底すべき場面】
・売買契約書、秘密保持契約書(NDA)、業務委託契約書などの法的合意文書
・就業規則、定款、社内規程などの組織ガバナンス文書
・官公庁・自治体に提出する許認可申請書や公的報告書
・株主総会や取締役会の招集通知・議事録
【平易さ・読みやすさを最優先すべき場面】
・一般的な顧客向けメール、社内チャットツールでの連絡
・Webサイトのランディングページ(LP)やセールスレター
・広報プレスリリース(一般消費者向け)
マーケティング文章や日常チャットにおいて無理に「及び」「並びに」を多用すると、かえって文章が硬化し可読性を損ないます。そうした場面では「〜と〜」「〜に加え〜」「箇条書き」を活用し、契約書や公用文では本稿で解説した厳格な階層構造を遵守するという二刀流の使い分けが、最も賢明なアプローチです。